怪我をし棒にふった2シーズン。復活を目指したこの2シーズン。
彼女が競技生活から遠ざかっていた間、新採点システムはますます浸透し、また日本のフィギュア界を巡る状況は激変した。
荒川静香や恩田美栄の引退、浅田真央の台頭、村主章枝の低迷、ジュニアの台頭。
ジャンプの回転不足に対する厳しい採点傾向、ジャンプが決まらなければ点数が伸びないという新システムの露呈。
太田由希奈をとりまく状況は正直厳しいものではあった。なにせ、ルッツやフリップといった高難度ジャンプを全く織り込むことができないのである。
勝手なことを言えば、今シーズンの演技(とりわけ全日本での)を見たかったともおもうし、なぜこの時期に、と思わなかったわけでもない。
しかしきっと、スポーツ選手にとって怪我というのは想像以上に過酷なものを強いるのだろう。
そしてその引退発表と重なるようにして、グランプリファイナルが始まる。
試合毎に修正し、進化し続ける浅田真央。恐るべき体力、そしてこの若さにして不屈の精神力。決して言い訳せず、常に笑顔でありながら、尋常でない努力を尋常でない才能でもって続ける孤独。
あきらめない中野友加里。
安藤美姫は別としても、中野さんがここまで伸びるとは、かつて誰が予想しただろう?本人に対してまことに申し訳ないとは思うが、ジュニア時代将来を真に嘱望されたのは、中野さんではなく太田由希奈だった。今彼女は新たな道を歩き出し、中野友加里は確実にバンクーバー代表への道を歩いている。ちょうど、かつてナオミ・ナリ・ナムとサーシャ・コーエンが辿った道を繰り返すかのように。
太田由希奈さんへは、お疲れ様と心から思う。だがしかし、決して普通の「引退スケーター」が辿るような凡庸な道は歩んでほしくないと思う。これほどの美しいスケーターの出現はまれなものであったのだから。
浅田真央、グランプリファイナル優勝の日に。


